
パスワードマネージャーのマスターパスワードを変更しても、通販、SNS、銀行などに保存している各サービスのパスワードまで自動で変わるわけではありません。何を守るために、どこで変更する操作なのかを分けて考えると、次に取るべき行動を判断しやすくなります。
まずは「保管庫の鍵」と「中にあるログイン情報」を分ける
パスワードマネージャーは、多数のサービスのログイン情報を一つの保管庫に記録し、その保管庫へ入るためにマスターパスワードを使う仕組みです。製品によっては、アカウントパスワードや保管庫パスワードなど、呼び方が異なります。
整理すると、関係するものは主に四つです。①保管庫、②保管庫を開くマスターパスワード、③保管庫内にある各サービスのログインIDとパスワード、④必要に応じて使う二段階認証や復旧コードです。
マスターパスワードは②に当たります。一方、通販サイトなどで実際に送信するパスワードは③です。役割も、変更する場所も別です。
マスターパスワードを変更しても、各サービス側は変わらない
一般に、マスターパスワードを変更すると変わるのは、パスワードマネージャーへのサインインや保管庫を開くときに使う認証情報です。保管庫に記録されていた各サービスのパスワードそのものや、サービス側の設定は変わりません。
たとえば、保管庫のマスターパスワードを新しくしても、通販サイトのログイン画面では、従来どおり通販サイト用のパスワードを使います。SNS、銀行、メールなどについても同様です。
このため、特定サービスのパスワードが第三者に知られた可能性がある、他サービスと使い回している、不審なアクセスが気になる、といった事情がある場合は、マスターパスワードの変更だけでは足りません。該当するサービスの公式の設定画面で、個別にパスワードを変更します。
サービスのパスワードを変更したら、保管庫の記録も更新する
サービス側でパスワードを変更しても、マスターパスワードには通常影響しません。ただし、保管庫に古いパスワードが残ることがあります。古い記録のままでは自動入力に失敗したり、誤って以前のパスワードを使ったりする原因になります。
作業は「サービス側で変更する」と「保管庫内の該当項目を更新する」を一組にするのが実用的です。新しいパスワードでサービスにログインできることを確認してから、保管庫の記録が新しい値になっているか確かめます。パスワードマネージャーが変更内容の保存を提案する場合も、保存先の項目が正しいか確認します。
パスワードを変更した直後に、同じサービスの古い項目が複数見つかることもあります。その場合は、どれが現在使うログイン情報かを確認し、不要な重複記録を残さないようにします。削除する前に、新しい情報でログインできるかを確かめると判断しやすくなります。
変更の前後に確認したいこと
保管庫へのアクセスを守るためにマスターパスワードを変更する場合は、長く、他のサービスとは異なる、推測されにくい新しいものを設定します。変更前には、二段階認証に使う端末や認証アプリ、復旧コードなどが手元にあるかを確認します。
クラウドで同期する製品では、変更後に別のスマホやPCで再ログイン、再認証を求められることがあります。復旧の方法や、マスターパスワードを忘れた場合に保管庫へ戻れるかどうかは、製品ごとに異なります。利用中の製品の案内を確認し、ログイン済みの端末、登録メールアドレス、信頼済み端末の扱いも見直します。
組織用のパスワードマネージャーでは、共有保管庫の権限、会社のサインインルール、SSO、端末管理が関係する場合があります。個人向けの手順をそのまま適用せず、組織の案内や管理者の指示を確認します。
パスキーや復旧コードも、サービス側では変わらない
保管庫には通常のパスワード以外に、パスキー、二段階認証の設定に関わる情報、復旧コード、メモ、カード情報などを記録していることがあります。マスターパスワードを変更しても、それだけで各サービスに登録したパスキーや二段階認証の設定、発行済みの復旧コードが変更されるわけではありません。
反対に、サービス側でパスキーや二段階認証を設定し直した場合は、保管庫に記録している関連情報にも更新が必要か確認します。復旧コードは表示し直すと以前のコードが使えなくなる製品もあるため、画面の説明に従って扱います。
迷ったときは、変更したい対象から決める
保管庫へのアクセスが心配なら、対象はマスターパスワードです。特定の通販サイトやSNSの認証情報を更新したいなら、対象はそのサービスのパスワードです。サービス側で変更した後は、保管庫の記録も更新します。
一度にすべてを変更する必要はありません。漏えいの警告、使い回し、不審なアクセスなどの事情があるサービスを優先し、サービスごとに異なる認証情報を使います。利用できる場合は二段階認証も有効にし、保管庫を開く手段と復旧手段を定期的に確認しておくと、変更時に慌てにくくなります。